ごきぶり日記329
ある日のこと
総選挙である。いつものように投票を済ませようと思ったが、今回に限り
投票所が違うという。永い間近くの小学校が充てて来られたが、今回は
学校の都合で急遽変更になったとのことである。
総選挙という国家の行方を決める大事なイベントに、一小学校の都合が優先
するというのはどんなものかなぁと首をかしげながら、新しい投票所を探す。
今回は××地区会館という。永い間この地に住んでいるものの、東京とは
云いながら、ど田舎のこと、地区が変わると小さな建物は知らないところが多い。
投票用紙の地図を見ても目標も書いてなく、全く要領を得ない。
仕方がないので選挙管理委員会に電話して投票所がどこにあるのか聞くことに
した。応対に出た女性に聞くと全く関係ない方向のマンションの名前が出る。
少々腹を立てかかったところ、「ちょっとお待ち下さい。ただいま大きな地図を
広げますから・・」と来た。
要するに知らないのである。待つことしばし、今度は男性が出て、「申し訳
ありません。変更が急で、ろくな地図も書けなかったものですから」という。
確かに旧街道から折れて、くねくね曲がった道なりに進むと小さな建物がある。
さしずめ部落の集会所というところか。
よく調べると家からものの5〜6分である。日頃地域に密着していないから
知る由もないのだが、知らない方も悪いと云われそうである。
帰り道、家内と一緒に散歩がてら別の道を通って帰ることにした。いつもは
車なので、歩いて見るといろいろな変化に出会う。風呂屋が温泉に様変わりして
露天風呂までついている。
「だから歩かなきゃ駄目なのよ」とまたも文句を言われる。風呂屋のそばに
新しいコインランドリーが出来ている。物珍しく眺めていると、中にワンピース
に身を固めた長い髪の女性がいる。
“独身生活なんだな”と考えているうちに、くるりと出口の方に向き直り、
とたんに足を上げてドアを思いっきり蹴飛ばした。ドアは引き戸になっている。
猛烈に大きな音を立ててドアは閉まった。どうやら腕組みをして、手を使うこと
なく蹴飛ばして閉めたようである。なんだか自分の子供を虐待して殺してしまう
若い母親を目の前で見たように、いや〜な気持ちにさせられてしまった。
今の世の中は女を女と思ってはいけないようだな、と会話しながら帰途に
ついたが瞬間、何とも割り切れない一種の厭世的な気分にさせられた。
選挙の結果はこのコラムが掲載される頃は決まっていることだろう。だが、
世の中は確実に住みにくくなっている。これも政治が悪いからだと判っている
のだろうか。
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