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DIARY

ごきぶり日記235

チーズはどこへ消えた?【2】


「ホー」は自分の置かれている環境とその変化に徐々に気づき始める。
「変わらなければ破滅する」という恐怖が行動を促す。だが、「ヘム」は相変わ らず、待っていればまたあの栄光の日々が戻って来ると信じている。
企業経営者は「ホー」の心境であり、従業員は「ヘム」の心理に似ている。

だからトップが声を枯らして危機感を訴えても、腹の底ではそんな事はあるはず がない、あるいは自分には関係ないと思っているのかも知れない。
往々にして人間は危機感を煽られると、「ホー」のように行動を始めるのでは なく、その危機を怖れて萎縮する方向へ動き易い。
国の膨大な借金を叩き込まれれば、先行き不安で消費が停滞する行動もその パターンだろう。

生き残りを掛けて企業が合併しても、海外拠点を閉鎖し、体質改善を図っても、 そこにはリストラというハリケーンが吹き荒れる。そうなれば無力な「ヘム」は じっと首をすくめて嵐が通り去り、自分に被害が及ばないことを祈るしかない。
「ヘム」が動かないのは、その昔のチーズ・ステーションCが如何に、栄光に 満ち、果てしない繁栄を思わせ、安泰な暮らしであったかを表している。

チーズ。ステーションCという名のバブルはそこまで人間に呪縛を掛けた。
「じっと待っていればやがて昔のような栄光が戻ってくる」という考えと「変わら なければ破滅する」という想いは心の中で相克を繰り返しているに違いない。
このような自己啓発の書はここで変わらなければあなたは破滅だ、変われば世の中 が大きく開けると煽り立てる。だが、恐らく“一体、どう変われば良いんだ!”と いう想いだろう。世の中が激変していると言ったところで毎日の仕事とそのやり方 は全く変わらないのだから。

デフレスパイラルの波は大企業にも押し寄せている。製品の価格が、あれよあれよ という間に下がってゆく。製品の中枢部品はアメリカなどに押さえ込まれ、原価が 下がらない。おまけに余剰人員が減っていないから、オーバーヘッドは異常に 大きく、利益を圧迫する。

作れば作るほど、売れば売るほど赤字が増えるという典型的なデフレスパイラルに 落ち込んでゆく。
もはやメーカーという「ヘム」自身が物作りを捨て、サービス業という新しい迷路 に挑戦する以外に方法が無いのかも知れない。

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