ごきぶり日記217
荒廃と寂しさと
ある先輩が話の中でこんなことを言っていた。
「通りすがりの人が、それこそ不躾に、無遠慮に人の顔をじろじろと見るん
ですよ。 そういう人は同年輩らしい人に多い。
何を観察されているのかなと気味悪くなることがあるんだが、 どうやら自分と
比べて“こいつ随分老けているな”とか、 “同じ世代だと思うのに随分若いな”
とか、あるいは“何をしているのかな”と 観察しているのではないかと思う
ように感じますよ。」
というような内容だった。
有り得る話である。歳を取ればなりふり構わず、マイペースで傍若無人という
のが通念だと思っていたが、相手を案外じっと観察して優越感に浸るネタを
探しているのではないか、という話も分からないではない。
それほど、寂しい世の中になったのかも知れない。だから友を求めている心境の
裏返しとも取れるのだ。
都会のど真ん中でこんな観察をやっていたら蹴飛ばされてしまうから、この話は
閑静な住宅街のご隠居の多いところかも知れない。
都会はすれ違う人に関心を示す余裕などない。特に若者はガンクロだろうが半裸に
近いスタイルだろうが、自分以外に人無しという生き方だから、こんなことは
起こりようがない。でも心はそれ以上に虚ろで寂しいのだ。
荒廃してゆく社会は年齢に関係なく皆が寂しい想いをしているということになる。
若者はアウトロー的な態度で社会からはみ出す気勢を示すが、インターネットの
掲示板には、“誰か友達になってくれ!”、“メル友が欲しい!”という叫びが溢れ
ている。主語も無く、述語も無い文章にならない投稿の中にも、行方も分からず
希望も無い迷いと寂しさが溢れていると感じるのは、ひが目だろうか。
年輩の女性でメールを始める人が多くなった。何事にも興味を示すのは女性の特性
で、長生きの秘訣だろうと思うが、やらなければ世の中から置き去りにされる不安
も手伝っているのかも知れない。若い奥さんたちもメル友を求め、自ら不倫を探す
というのも案外本当で、深刻なのかも知れないのだ。
政治が国民から遊離し、経済も良くなるのか悪くなるのか皆目見当がつかない。
「来年の景気は?」と投げかけ、答えも聞かず「良くなるわけありませんよねぇ」
と締めくくる司会者もいる。
人間を殺すのではなく壊すという、人を殺すことがどうして罪悪なんだという
高校生、自分の生んだ子が泣きやまないからと熱湯をかける若い母親、毎日の
ように発生する、この戦慄すべき社会の荒廃を政治家は何と見ているのか。
向こうから若者が来たら逃げる、とテレビのインタビューで答えている主婦が
いたが、ニューヨークのブロードウェイで向こうから薬中がラリッて来たら
反対側に避けるという話などとは比較にならないほど深刻である。
老人が老人同士で相手の顔を覗き込む寂しさなど、可愛いいものだと思える
ようになってきた。
盛況な「コンピュータおばあちゃんの会」ここでも女性が先を走っている。
男はいつも寂しいのかも知れない。
|