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DIARY

ゴキブリ日記93

東京の田舎の季節


東京都 稲城市。

家内が仙台中央郵便局で、稲城市と言ったところ「何処の県にあるのですか?」と聞かれ、頭に来たらしく「東京ですよ!」と言い返したという笑い話がある。
千葉県の稲毛市の方が有名なのだから仕方がない。

我が家から5分と歩かないうちに多摩川土手に出る。土手の手前には鬱蒼とした桜並木が延々と連なっている。ついこの前まで枯れ木の枝は、ほんのりと赤みを帯びたなと思うまもなく、ぱっと開花して散り、既に新緑の青葉に変身してしまった。

奥多摩湖に小河内ダムが出来るまでは、多摩川は川幅一杯に満々と水を湛え、悠々と流れていた。
夕陽が落ちかかると何処からともなく釣り人が集まり、長い列を作り腰まで浸かって竿を垂れる。鮎の釣り人である。

何本もの毛針をつけた長い竿を流れに沿って上流から下流へ水の流れに逆らわずに流し、また上流に投げる動作を繰り返す。
いっぱしの釣り人気分で仲間入りをしたが、鮎が釣れた記憶はない。
その間を多摩川名物の大きな鯉が悠々と泳いでいる。

釣りに飽きると近くの小川に入り、シャベルでひと掬いすると山盛りの泥鰌が取れる。持って帰ったら、「何よ、気持ちが悪い」と家内に叱られ、また捨てに帰った事を思い出す。

いろいろ思い出しながら土手の遊歩道を歩く。私はこの道が好きだ。
気持ちがおおらかに広がる想いが実に気持ち良い。広い川幅の向こうはもう府中市。対岸が霞んで見えるのも晩春である。

想いは皆同じらしく、多くの人たちが思い思いに家族連れで散策を楽しんでいる。街は一向に発展しないが、それと引き替えのように自然を残してくれているのが有り難い。

大きく開けた川面の空には、そろそろ、夏の近づく気配がする。

 

 

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