ゴキブリ日記29
デパート
比較的、男性には無縁の世界である。特に最近は巨大デパートなどが出来、その圧倒
される様な絢爛さと買わせんかなの商魂には一種の異様さを感じる。
デパートというところは一階の化粧品、あるいは宝石売場を通らないとエスカレータ
に乗れないように出来ている。何しろ有名デパートによっては半世紀前からこの位置
が変わっていないというから、香水やオードトワレの誘うような甘い匂いとダイヤ
モンド、オパールといった高級装飾品が如何に女ごころを虜にしてきたかということ
なのだろう。
大方の殿方はこの道を通るのに、なにがしか違和感を感じるのではなかろうか。
中には女性の本性を見る想いで、恐怖感を感じる人もいるかも知れない。正に女護が
島に迷い混み、女の執念の片鱗を見るからではなかろうか。
バブルが崩壊して余った金が無くなり、こうした場所は閑古鳥が鳴くのでは、と考え
るのは男の浅はかさらしい。この誘惑者たちはそんなこととは無関係に女性心理に
取りついている。
いつも同じ背広ばかり着ているので、「たまには新しいのを作りなさいよ」と家内に
連れられて渋々出かけるが、実は家内は自分だけ買い物に励んでいるのに若干の後ろ
めたさを感じ、同罪にしようと思っているにすぎないのであり、このことはとっくに
読んでいるのだが。
何処のデパートも変わりないと思うが、紳士服、紳士用品などは付け足しのように
扱われているようだ。それもその筈、デパートの客の70%〜80%は女性客だという。
紳士服売場は閑散としており、店員の数がやたらに多い。
てぐすね引いて待ちかまえているように思えて入りにくい。入ったら最後、買わなけ
ればならない様な気分に陥る。
見回すと同じように奥さんに引っ張られて買いに来ている紳士が多い。聞いていると
やはりいろいろとコメントを貰って悩んでいる。
日本経済の激変に連れて消費者の趣向は大きく揺れ動いた。「激安」の嵐は知っての
通りだし、デパートもそれに連れて大きく揺れ動いた。安いものを求める消費者には
Popularとか名前も付けそれに対応し、高級品は守り通す。
バブルの時のように何でも買い漁る心理は薄れたとはいえ、依然として女性の買い物
心理は衰えない。
「友の会」というのも、まさにうまく出来ている。毎月1万か2万円の積み立てを
する。一年経ってなにがしかの利息が付いてチケットで戻って来る。そのチケット
を使い、その店で買い物すると5%程度割引になる。まさに女性心理をうまく突いて
いる商法である。
経営上から見ると、デパートには恐らく数100万円の日銭ならぬ月銭が入って来る。
銀行の貸し出し金利は3%程度だが、そんなに金利をつけることはない。まさに
うまい資金調達方法である。更に、この金は確実に自分のところに戻って来る。
つまり、この分の売上額は固定されているのである。買う方は5%の値引きで大いに
得をした気になり、かつ、現金が要らないからただで買っている心理になる。
かくして、何か買う物はないかと探し回ることになる。まさに女性相手でなければ
出来ない商売である。
「買う物がない」という飽食の時代とはいえデパートの女性客は驚く程に消費意欲は
旺盛だ。かくいう女房ですら「なんでみんなあんなに買うのかしら。よくお金を持っ
ているわね」と言うほどである。
確かに特設売場などの雰囲気は異常だ。レストラン、喫茶店などは女性連ればかり。
今頃、きっと旦那は昼飯を如何に安くあげようかと苦労しているだろうに、と考え
させられる。世の中、どうなってしまったのだろうとよく思うのだが。
それでもデパートは手を変え、品を変え女性の欲望を刺激する。それが悪いといえば
現代資本主義を否定することになる。その限界がどこにあるのか、どうなってゆく
のか、誰にも分からない。
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