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DIARY

ゴキブリ日記21

AA君からの返信


<ゴキブリの前置き>
ゴキブリ日記12(AA君に送る手紙)を思い出して頂きたい。
その後、暫くAA君から返事が無かったが、突然の返信である。
先の手紙は永年、平和に暮らしていたAA君の家庭に大きな波紋を投げかけ る様な過激なものだったから、恐らくは悩んだことだろうとお察しする。
なんと云ってきたのかな?



お手紙拝見しました。
仰ることは漠然と分かる気がするのですが、未だ我々には心に刺さる実感と して迫って来ません。
我々は先輩と同じように、希望に燃えて日本を代表するこの企業に入りまし た。そして何の矛盾も持たずに会社のため、社会のため、家族のために 全力を尽くして来ましたし、現在も変わりないのです。

でも確かに、冷静に毎日を振り返って見ると自分の関心は組織のこと、人事 のこと、自分の出世のこと、会社の人間関係のこと、一色ですね。
でも仕方がないでしょう。大企業に入り、その会社の企業人になるように 教育を受け、その世界で長い間暮らし、家族を作って来たのです。つまり 例え、仕込まれたにせよマインドコントロールされているにせよ、我々には 此処が人生の、世界のすべてなのですから。

日本の大企業が、歴史的に終身雇用制と年功序列を基本として、社員の企業 に対する忠誠心をより所に発展してきたことは良く分かります。
だが、我々に取って会社は家族なのです。あなたはこの家族が遠からず崩壊 すると云われるのですね。確かに欧米に追いつけ、追い越せで目覚ましい 発展を遂げてきた日本が、此処に来て製品もソフトウエアも勝てる物がなく、 アメリカに依存しなければならない事例が急激に拡大しています。
それでは、と思っても会社の構造が以前とは大きく変わっており、膨れあが った事業のため中間管理者層は内部の会議や外注先の管理に追われ、開発力 を失い、同時に夢も無くし、サラリーマン化しつつあることは否めません。
心ある幹部もこのままでは駄目になる、と心配している人もおります。

先輩はよく、物を生み出さずに何がメーカーか、といっていました。また、 戦略ユニットごとに事業を分散し、その経営陣に命をかけた事業責任を持た せ、駄目なら即時交代すべきだ、とも。
あまりにも過激な発言とひやひやしたことが再三ありました。でも今、そう した目で見ると組織は変わっても一部、小事業体の経営幹部にその腕力はなく、 責任も曖昧なところがあるのは否定出来ません。アメリカの様な完全な実力 社会ではなく、企業集団が一つの家族の様な日本では無理なことと思います。

もし、あなたの云われるように年功序列、終身雇用が崩壊し、個人の独創性 や専門能力が優先する企業社会に変化するのだとするとガラスのファミリー は脆くも壊れますね。でも私はこの会社が好きなのです。そうはさせたくない。
今度、この事態に我々の立場でどうすれば良いのか教えて下さい。

「真剣に自分の生き方を考える時であることは間違いない」とありましたね。
でも、この言葉はいますぐ此処を飛び出せということとは受け取っていません。
大企業は多くの資産を持ち、限りない活躍の場を与えて呉れます。
それは、つまらない会議に出ることも、上司の顔色を見ることもあります。
能力は無いのに官僚的な上司もたまにはおりますよ。だが、いまの日本には アメリカの様なベンチャー育成のメカニズムは無いではありませんか。

先輩自身にしても「大企業の中の中小企業」と称して、大企業の資産と ネオンサインを活用し、思いのままに事業展開をしようとしたではありませ んか。
ちょっと言い過ぎました。でも私は、飛び出すことも、中で改革する事も これからは同じように大変なことだと考えています。本音はやはり暖かい 温室、ビニールハウスから出たくないのかも知れませんね。

先輩は「いま必要な改革はこれまでの伝統や習慣を破壊するような激しい ものだ。だから内部から改革は出来ない。外部ベンチャーの育成と取り込み しか無いだろう」といっていましたね。そこに活路があるならば、そうしよ うではありませんか。ベンチャーが次々と新製品やアイデアを持ち込む、 事業が活性化すると同時に社内失業者も生まれる。激しい抵抗があるかも 知れないが、組織は徐々に変貌して行く。というシナリオでしたね。
この手紙を書いているうちに何だか出来そうな気がしてきました。
また、教えて下さい。
                           では。



<ゴキブリの読後感>
前回、我が輩は「日本が大きく変化するって本当のことかな?」と独り言 を云った。あとで聞いたところによるとアジアの技術力、とりわけ物づくり の技術力が急速に進歩し、遠からず日本を追い抜くだろうということだ。
アメリカというのは元来、社会構造や思想、教育が全く違う国で、諸々の 規制の少ない国だから、こんな時は底力を発揮するという。
そうすると戦後50年、経験したことのない変化が日本を襲うということらしい。
これは大変なことだと我が輩ですら感じる。AA君、頑張ってくれ。

 

 

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