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DIARY

ごきぶり日記188

考えぬ葦はいずこへ


再び佐々木社長との会話から。
「最近の若い人は物事をすぐ、諦めてしまう。これが駄目なら別の方法は無いか と考え抜くことをしませんね。“あの手、この手”が全くない。これでは日本は 駄目になってしまうと思いますよ」と仰る。

まさに同感である。弱い生物の人間は“考える葦”だからこそ霊長として存在して いる。考えることをやめた時、人間は単なる“風にそよぐ葦”となり、自然界から 淘汰されるに違いない。
「人類存亡の問題」はさて置いて会社人間、つまりサラリーマンが退化している というのは確かかも知れない。激動の時代をくぐり抜け、生き抜いてきた先輩は 皆、同じような実感にやりきれない想いをなさっているようだ。

当たり前のことだが、考え抜かなければ厳しい商戦に勝てるわけが無い。 ところが、一流企業とその関連会社にそんな傾向が顕著なのだ。
営業の部長、課長と名の付く人間が紹介を受けてお得意先を訪問する。その後、 どうなったのか、どんなアプローチをしたのか聞いてみると、「あれからお客から 何も言ってきませんよ」というとのこと。つまりその後は顔も出していないと言う ことになる。

その昔、ある営業マンが客先の部長と顔馴染みになるために、その人の性格や 趣味を調べたところ、熱帯魚マニアということがわかった。
そこで熱帯魚の勉強をすると同時に自分でも飼い始めた。それからは飼育や餌の 選定について教えを乞うために、この部長さんのところにせっせと通ったという。
まさに話題には事欠かない。親身になって教えてくれ、高価な熱帯魚を分けてくれ るようになった。その時点でセールスは完全に成功を収めたということである。

何事によらず、こんなプロ根性が無くなってしまったのかも知れない。
何故だろう。何故に人間として考え抜くという珠玉のような資質が掛け落ちて しまうのだろうか。
“そんなことは無い!”と叱られるかも知れない。確かに誰も彼もというわけでは ないのだが、先の話のように年輩者から見れば一様に見えるのだから風潮としては 間違いでは無いのだろう。

創造性に欠けるのは日本人の特質と言われるが、これは伝統的な社会構造や教育に あるのだろうからやむを得ないものの、戦後、欧米に追いつけ追い越せの時代には 強烈な負けじ魂と粘りがあった。そう考えると原因はやはりバブルに行き着く。
教育もままならぬ大量採用、作れば売れる時代だから考える必要もなく、売上を 伸ばすための馬車馬のような作業が、人間性喪失の最大の原因と言っても間違い ではあるまい。

そう言えば先輩は、そのまた先輩の後ろ姿を見て育った。
ある時、仕事の上で大きな問題が起こる。そんなとき課長は「これから部長に 報告する。一緒に来て、こんなとき私がどういう風に報告して、どのように始末を 付けるか、発言しないで良くみて置くように」
これが背中で教え、人を育てる極意であった。今、こんな上司はいないだろう。 こんな教育が出来る環境も無くなった。それと同時に人材が欠乏して行った。

仕事と人間教育は常に表裏一体にあり、親父や兄貴のように叱り、叱られれば その生き様を真似て盗み取り、そして成長する。
こんな時代も生き方も知らなければ、何で今の生き方が間違っているかなどと 思い至るだろうか。

時代が悪いとばかり言ってはいられない。開発途上国の若者は、ひもじいが故に 必死に闘い、学び、進歩しようとしている。日本人が衰退する姿など、見たくは ないものだ。

 

 

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