(株)テクノクリエート トップページへ TOP


DIARY

ごきぶり日記177

悪魔の顔


古典落語の中に“あかにし屋 けち兵衛”という徹底した吝嗇家の話がある。
けち兵衛は、それこそケチの見本のような男で、給料を払うのがもったいなくて 使用人を殆ど首にしてしまい、食生活は一汁一菜どころか、梅干しを見ていれば 自然に唾液が出て来るから、それですっぽり飯をかき込むというほど、まさに “爪に火を灯す”倹約をして財産を残すいわゆる“ケチ”である。

この男が臨終を前にして息子を枕元に呼び、私が死んだら勿体ないから葬式を 出さなくて良いという。息子がそれでは棺桶の片棒を担ぐ人間が居ない、どう しようと困っていると“なぁに心配するこたぁない。私が桶から出て担ぐ”と いう落ちになっている。

この世の中、貧乏なんていう言葉はすでに死語になっているし、貧乏の本当の つらさなど経験しようもない。古典落語には、そんな地獄のような貧乏をはぐら かし、笑い飛ばすペーソスがある。
“宵越しの金は持たねぇ”という負け惜しみが、江戸っ子の心意気であり、かつ シンボルだが、金は人の心を歪めることをよく知っていたのかもしれない。

貧乏が美学であった時代には人間の心が主役であり、現代は金が主役に変わった ということかも知れない。
世の中の景気が良くなって、みんなの所得が増え、暮らし向きが楽になること は良いことには違いない。だが、人間の欲望には限りが無いとはよくいったもの で、“この辺で満足”というブレーキがなかなか効かない。

飛び散った日本のバブルのあとで、アメリカは絶好調の景気が続く。アメリカの 株価は間違いなくバブルである。
そうした中で、日本の株価も久しぶりに2万円の大台を超えた。現在の日経平均 株価の半分はIT関連の数社が引っ張っているという。
高額IT株といえば Yahoo!Japanが 1.56億円 日本テレコム 509万円、ドコモ 385万円、NTT 156万円、DDI 115万円、光通信 22.5万円、(2月17日終値)などが ある。

たった一株の値段である。アメリカの株が利上げ懸念で危なくなると、膨大な 金が行方を求めてうろつく。水のように低きに流れてくれれば問題はないが、 金は弱きを求めて竜巻のように襲いかかる。過剰流動性は、いつも匪賊のように 荒らし回るから始末が悪い。

物を作り、売り、利潤を上げるならまだ分かるが、何で儲かるのか依然として よく分からないものがあり、中には赤字経営の会社がある。
そんなことは百も承知らしいのだが、今後、10年、20年の永い目で見れば成長は 間違いないということらしい。だが、株は当面の実質利益の追求だろうから将来 の夢を買うわけがない。やはり夢とは近い将来の一攫千金狙いなのだろう。

郵便貯金の満期を迎え、106兆円が吐き出される。郵政省はこのうち約40兆円弱が 流出すると見ているようだが、この膨大な金が株や投資信託に流れ込む。
勿論、ゼロ金利の世の中、これは水の流れのように自然なのだが、バブル時代の 土地神話がIT神話に姿を変えて、またも襲ってきたような錯覚を起こす。

数秒、数十秒の情報の差を争って、金を追いかけ回すトレーダーに人間の心など 求める方が間違っているのだろうが、これでは悪魔に魂を売って欲しいものを 手に入れ、地獄の墜ちるファウストと変わりが無いのではあるまいか。

江戸時代までさかのぼる必要はないものの、適当に止まらないと人間の顔が やがて悪魔のように変化するかも知れない。

 

 

みなさまからのご意見、ご感想をお待ちしております。 E-Mail: info@techno-create.com
Copyright(c)2001-2002 株式会社テクノクリエート All rights reserved.