ごきぶり日記145
上げ底の雇用対策
失業率の急上昇によって雇用対策が最重点施策に挙がっている。
政府の打ち出した雇用対策によれば、
◎自治体での雇用:30万人
◎新規成長分野への雇用:15万人
◎人事移動特別助成金:20万人
◎企業助成の条件緩和:7万人
都合、72万人となっている。失業者300数10万人といわれる現状には及びもつかない。
自治体での雇用は、公共事業と似たようなものだから、これはさておいて新規事業と
助成金に大いに疑問がある。
“人が余っているから、会社を作らせてそっちへ回せ”という単純思考では、うまく
行かないことは分かってきたらしい。そこで“ミスマッチ”という言葉が飛び出して
来る。
元銀行員や証券マンを技術者に転換することは出来ない。元役員や管理職に荷物を
担いで走り回る宅配をやれというのもミスマッチかも知れない。
やっても見ないで否定する気はないが、真面目にこんなことが進むと思っているの
だろうか。
大企業の技術者ですら、ある年代になると転換が難しくなっていることを知っている
のだろうか。
一流の大学、大学院の工学部を出た技術者が、すぐに課長になり、部長に昇進する。
課長でも数10人、部長なら100人を越す部下を抱えて、スタッフの作り出した膨大な
人事、管理システムから派生する業務をこなしながら、直接の部下管理をやる。
加えて会議、会議の連発である。本業は製品開発だろうが、こうなれば本業に集中
出来る時間は数割以下だろう。
かくするうちに考えることは部下に任せ、自分で勉強し、自分で開発設計に携わる
気力は萎えて来る。管理などというものは、組織の形態が出来上がっており、部下に
ある程度の人材が居れば誰にでも出来るし、そこにノウハウは無い。
だが、多くの人はそうした形での昇進を望み、そうなることによって社会的立場や
給料が増えると信じている。社員が悪いのではない。根の深い日本企業の変われない
姿がそこにある。こうした基礎技術力を持った高度の人材まで、「あなたは何が
出来ますか」と聞けば管理職が出来ますとしか云いようのない、使い物にならない
粗大ゴミに化してしまう。技術は日毎に進歩し、変化する。似たようなことをやって
いるからといって、この変化と進化には追いつけない世の中なのである。
人々に新たに企業を起こさせ、そこで余剰人員を吸収することが、本当に進むと
思っているのだろうか。アメリカのYahoo!やAOLの成功を見てイメージしているの
ではあるまいか。
メディアはもっぱら政治家、大学教授、評論家の意見に頼っている。
日本でベンチャーを起こそうとして塗炭の苦しみをなめ、挫折した人たちの叫び声を
聞き、日本に何が欠けているのか、もっと地に足のついた議論をすべきではないか。
大企業とそれを取り巻く中小企業の関係も変化が無い。
既存の大企業に取って中小企業はあくまで系列のことであり下請会社に過ぎない。
これを支配し、従わせることが使い方と思っているのだから、そこには使う方も、
使われる方にも既得権があり、新たに関係を持つことは容易でない。
本来は欧米のように大企業が良い製品、優れた技術を求め、両者の間を繋ぐ市場が
あっても良さそうなものだが、そんな方向に動く気配は微塵も感じられない。
新規事業者はこの壁も乗り越えなければならないのである。
補助金をやれば何とかなるだろうという“金で解決”式の考え方が、かいま見える。
金に拘れば心を失う。起業の精神にとって、金はあくまでも二次的な補助手段だ。
あくまでも過去の日本式経営に拘りを持ち、それで闘うのか、欧米流に徹するのか、
あるいは折衷方式か、はっきりしないのが問題である。
|