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DIARY

ごきぶり日記134

サービス悪けりゃ〜


随分古い話をすると思われそうだが、10年ばかり前に中国を旅行した。
実はこの旅行に懲りてそれ以来、中国には足を踏み入れていない。 別に事件があったわけでもないのだが、当時、日本より40年は遅れていると 云われた社会に、何となくちぐはぐな違和感を感じたためらしい。

昼食時に旅行会社の設定した一流中華料理(本当かどうかは定かではない)で 昼食を取った時のこと。広いレストラン内の壁際にビールの木箱うず高く積み 重ねられていた。その巨大なビール箱に向かって放水している。 何事かと思って聞いたところ「冷蔵庫などないから、ああやって冷やしている のだ」とのこと。

真夏に放水してビールが冷えるわけがない。ビールを注文すると若い女性が 運んで来るまでは良いのだが、放り出すように、叩きつけるようにテーブルの 上に生ぬるいビールを置いてさっさと戻る。味も素っ気もないサービスなのである。 “何だあれは”と友人に話すと、にやにや笑いながら「彼女らは役人なのだよ。 飲ましてやっていると思っているのさ」とのこと。

成る程、開放以前の中国には人民に奉仕する思想はあっても、遊びの人間に媚びる 必要はなかったのである。
少し前のテレビコマーシャルで、小椋 佳さんの「サービス悪けりゃ命取り〜」 というのがあった。何処がスポンサーなのか覚えていないが。これもウェイトレス が水を運んで来てテーブルにどんと叩きつけている。これを見て中国を想い 出したらしい。

サービスとは「社会に有用な無形の生産」ともいうから、これによって気分を良く してまた来ようと思わせて始めて「有用な無形の生産」になる。ただの運搬係り なら最近の尖端ロボットの方がもっと静かに気持ちよく置いていってくれる。

不景気でサービス競争時代の日本では、まさかこんな事はあるまいと思うと案外 そうでもない。この不景気は何処も厳しいが飲食店は特に厳しいらしい。 だから賃金の安いアルバイトやフリーターなどを使う。接客マナーは一朝一夕で 出来るものでは無く、客の心を掴み、痒いところに手が届いてこそサービスになる のだが、言葉は教え込まれても、心の訓練は全く行き届かない。

だからコマーシャルや中国風な応対を見掛ける事になる。暗記させられた挨拶と 手足の動きが連動せず、ちぐはぐで、よそよそしいのが誰の目にも映ってしまう。 サービスとは商売におまけを付けること、奉仕をすることでその見返りとして客が 喜んでまたやってくる付加価値が付くからサービスなのであって、出方によっては 逆効果になる。

大企業のアフターサービスも似たようなところがある。サービスが悪いという より、感じが悪い。「こんなものやっても儲からない」と顔に書いてある。 販売と修理などのアフターサービスは表裏一体であり、誠意を持って対応して くれれば、“感じが良いな。また買おう”と思うのが人情というものだが、 何を教育しているのやら、あまりいい顔せず“持ってらっしゃい、やってやるよ” 式が多い。

商売はお客が満足し、商う方も利益が上がってこそ成り立つ。お客の満足度は 価値観の問題であり、これでは高いかな?と思う額でも、価値観の尺度によって は喜んで買ってくれ、そしてこそ利益が出て双方が満足する。世の中が益々 厳しくなり、競争が激しくなると、こんな当たり前の話が何処かに忘れさられる ような気がしてならない。

 

 

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