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DIARY

ごきぶり日記130

ビニールハウス


中に入ると燦々とした太陽を、四方八方からふんだんに受けて、野菜や果物が 季節を知らず、幸せそうに生きている。
外の温度や風雪が、どんなに厳しかろうが、そこは別世界。それもその筈で 温度はコンピュータで管理され、栄養分がたっぷり含んだ綺麗な水が豊富に 流れ、ものによっては音楽を聴かせると良く育つという事で、クラシックが 流されている。まさに桃源郷である。

こうした人工環境の中ですくすくと育つ生命は一体、どんなものか。
野菜や果物なら、露地物の出回る前に綺麗な良く成長した製品として、高く 売れるから何もいう事は無い。はて、何が云いたかったのか。そうそう、何だか 今までのある種の日本企業を見ているような気がしたのだ。
一度、会社に入ると終身雇用、年功序列を背景に会社に忠誠を尽くす鋳型に はめ込まれる。そこには社員第一主義、ファミリー主義の音楽が流れている。

勿論、誰も“はめ込まれた”などとは思わない。輝くネオンサインの元に誇らし く将来に大きな希望を抱いて胸を張る。やがて会社という家族の憲法、ルールが 身に染みつき、生活が会社一色で会社イコール社会という認識が出来上がる。 ある意味でのマインドコントロールかも知れない。そうこうするうちに組織の 巨大さや、その組織の歯車としての立場が判ってくるが、その時はもう、反逆 も反抗も試みる勇気はない。会社=社会なのだから、会社を外せばそこには何も 残らないのだが、居心地が良いから、仲々それに気づかない。

“永遠に不滅”と信じた会社が揺れ始めた。
大組織はピラミッドのように末端からトップまでがっちりとした組織構造に よって、経営のバランス、人材の育成、事業の継承がきちっと出来ていそう なのだが、案外、そうでも無い。一部の人間が権力を握ると取り巻きが出来て、 独裁体制が確立されて行く。

人間だから驕り高ぶりが増長して果ては挫折する。同時に何万、何十万と云う 社員とその家族は途端の苦しみをなめる事になる。巨大で、堅固なビルと思った 城は案外ビニールハウスだったのかも知れない。
ビニールハウスは時が経てば破れて亀裂が入る。そこからは容赦なく外気が侵入 して寒気や烈風にに晒される。ビニールハウスで育った生物はそんな外気の環境 に耐える力を既に失っており、たちどころに肺炎を起こしてしまう。

外では少ないマーケットのパイを求めて新サービス、新製品、価格競争の激戦が 起こっている。これからは専門性を持てとか、個の時代だというが、今まで ビニールハウスで育てて来て、いきなり自分の力で生きろというのは理に叶わ ない。経営者というものが先見性と洞察力を持った水先案内人なら何故、事前に 軟着陸出きる誘導を行わなかったのかと恨む人間が出てもおかしくない。 とにかく今からでも普通の外気で生きられる訓練をしなければなるまい。

“会社のネオンサインとネームバリュウが全くなかったら、今あなたは何が出来ますか?”

 

 

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