ごきぶり日記127
蛸が足を喰う
蛸の足を食べる話ではない。蛸が自分の足を自分で食べる話である。
この3月決算期を迎えて企業が軒並み赤字決算の見通しを出しつつある。
一歩先行して銀行、証券が公的資金受け入れの前提として合従連衡、リストラを進めている。提携や合併によってこれからどれほどのリストラが始まるか、皆固唾をのんで見守っている。
「リストラと云っても真っ先に生首を切るとは限らない。先ず採用を抑制し、自然減耗を待ち、しかる後に生首を落とす」とあるラジオ放送で流していたが、“生首”とは
何とも恐ろしい、無神経な表現である。
既に失業者は150万人を越えたとか、社内失業者は700万人いるとかいう話がポンポン飛び出す。バブルの精算が一筋縄では出来ないことが段々はっきりしてきた。
ついこの間まで、姿の見えない銀行の不良資産について侃々諤々と議論していたが、ついに10兆円を超える償却が見えてきた。だが、不良資産は景気が好転しない限り、増えることはあっても減ることはない。アジアなど恐怖の火種は尽きない。
大きな懸念は有頂天のバブルによって企業の構造がすっかり変わっていることだろう。景気が鰻登りに拡大し、受注がどんどん増える、だから衛星会社を作る、系列下請けは拡大するというパターンの中で、事業会社本体は自分で仕事をするより、これらの外郭会社への仕事の配分、管理に追いまくられて来た。これによって本来の業務つまり、新市場開発、新製品企画、新技術開発力などが大なり小なり落ちてしまった。おまけに社員が夢を失い、サラリーマン化しているのが、共通した現象らしい。
さりとて急ごしらえの衛星会社は煽り立てられるように生産をあげなければならないから、独立会社として立派な経営の基礎が出来ているわけではない。人材も不足、know-Howも足りない、技術力も然りなのだ。それでも力を無くした本体が旧態依然として中央集権的に支配する構図は変わらない。
さて、このままリストラすればどうなるか。本体の人間の生首を切り落とすのは忍びない、とすれば出銭を減らすために衛星群を下から切り落して行くことになるかも知れない。だが、いまや技術力や know-How はこちらに移っている。これを切り落とすことは、まさに「蛸が自分の足を喰っている図」である。足が無くなって残った頭(か胴体か知らないが)はもう動けないし、何も出来ない。
まさか一流の経営者がこんなことにしてしまうことはないだろう。でも、今まで雲の上に居た経営陣は案外こんな単純なことが分からないことがある。
この不景気に成長している会社は経営者自らが泥にまみれ、牽引力を発揮している。
少人数でも、どんどん分社して自由にやらせる。成長するのも潰れるのも本人たち次第なのだから、出来る出来ないに関係なく、淘汰されてなるものかと必死に生き抜こうと努力する。親会社にぶら下がるすべは全くない。まさに、これからの企業の姿を見ているようだ。
「これからの良い会社とは経営者が優れた会社」という。
蛸が自分の足を自分で食い尽くした図に、ならないように頑張らなければならない。
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