ゼネラルモーターズ(GM)が連邦破産法11条を適用し倒産した。
筆者のアメリカ在住時は必ずと言っていいほどGM車を愛用した。何故GMか。
理由はない。恐らくレンタカー会社が黙っていればGM車をあてがってくれたせいではないかと思っている。
何しろ大きい。運転席と助手席に境がなく、急なハンドル捌きをすると尻が助手席の方に滑って移動してしまう。ステアリングが軽く、捉まえていないとくるくる回ってしまう。だからハンドルを片手で回す癖がついてしまう。
これは調整が悪いのだろうと思っていた。
確かに整備は悪い。信号待ちで停車中にエンジンが停止してしまう。坂道でエンストを起こし、スルスルとバックしてしまい、後続車にドスン、というくだりはどこかで書いた気がする。
そんなとき後続車の運手者が降りてきて、「どうした?」と声を掛けてくる。
エンストだよ、と答えると「そうか、気をつけてな」と戻って行く。そんな話だったと思う。つまりそんなことは日常茶飯事というアメ車である。
もっとも怖いのは例のサンフランシスコの坂道である。経験済みの方も多いことだろう。その坂道と直角にクロスする道路に上がる直前は急勾配のために先が全く見えない。そんなところでエンストを起こしたら、バックのままサンフラン湾まで一直線と思う恐怖がよぎる。
だから、チョークを掛けるように左足でブレーキを踏み、徐々に緩めながらその分、アクセルを踏み込む。
やっとの思いで平坦なクロスロードに上がり、また次の恐怖の坂道に挑戦する。
余談だが、急な坂道の両側の家の前に駐車スペースがある。そこに駐車している車は例外なく、ハンドルを上り方向なら左に、下り方向なら右に思いっきり
切る。どうやらサイドブレーキが外れて、スルスルと海の方向に走り出さない防御の手法らしい。
そんなGM車だったが、それでも人気があった。ある時、レンタカーを借り換えたら、「オールズモービル シェラ」の新車が回ってきた。
どんな形だったか既に覚えていない。だがこの車をレジデンスの駐車場に置き、翌朝そこに行って驚いた。何とその新車の周りに7~8人の奥様方(勿論、アメリカンレディ)が取り巻いているではないか。
近づくと何人かが「これはあなたの車?」と聞く。レンタカーとは言わずに勿論!と胸を張る。「凄い車だわ。こんなの見たことない!」と賛嘆の声がひとしきり。大いに面目をほどこした。
このGMが破産して国有化される。いつ元の勇姿に戻るかは定かではない。
GMには確かに夢があった。